自分に合ったDVDリッパーを選ぶ

 Linuxは性能の劣るアプリケーションのせいで過小評価されることがあるが、実態はそうではない。たとえば、DVDリッパーを見てみよう。Linuxマシン上で動作するDVDリッパーは非常に多い。あまり多いので、自分にとって最適なものを見極めるのは一苦労だ。

 筆者は、HandBrakeGTK、AcidRip、dvd::rip、Thoggen、VLCという5つのプログラムに対して3つのテストを実施した。最初のテストでは、市販のStar Wars Episode III: Revenge of the Sith DVDから3分間のボーナス機能をリッピングした。2番目のテストでも同じシーンを使用したが、今度はlibdvdcss2(DVD暗号解読プログラム)をインストールしてテストを行った。3番目のテストでは、自分で焼いた暗号化されていないDVDを使用した(Breakdown:長さは約46秒で、the Brickfilmsサイトから入手できる)。テストに使用したプラットフォームは、1GBのRAMを搭載したDell Dimension 4700とKubuntu Gutsy 7.10で、他のプログラムができるだけ動作していない状態でテストを行った。出力は(理想的には)MP4で、H.264圧縮、30フレーム/秒(FPS)である(これをdvd::ripではXvidで、AcidRipではlavcで、ThoggenではOgg Theoraで行っている)。

リッピングパフォーマンス(分:秒)
タイトル \ ツール HandBrake AcidRip dvd::rip Thoggen VLC
Star Wars DVD(暗号化) 2:28 成功せず 成功せず 11:00 成功せず
Star Wars DVD(暗号化、libdvdcss2) 2:42 成功せず 1:13 2:20 VLCにはデフォルトでlibdvdcss2が含まれている
Breakdown(非暗号化) 2:28 0:30 0:52 1:54 0:13

HandBrakeとHandBrakeGTK

 HandBrakeは、もともとGeneral Public License(GPL)の下でライセンスされていたBeOS DVDリッパーで、Macアプリケーションとして人気を獲得し、使いやすさとパワーが賞賛された。1年ほど前、開発者たちがMediaForkというフォークを作成して、WindowsおよびLinuxのポートを追加した。2007年3月にこの2つが合体し、4月にHandBrake 0.8.5b1がリリースされ、Windows、Macintosh、Linuxのポートが揃った。残念ながら、公式のLinux GUIはまだない(ただし、QtベースのGUIのうわさはある)。そのため、コマンドラインに精通していないLinuxユーザは長いことHandBrakeを使用できなかった(コマンドラインでの使用方法については「CLI Magic: Porting DVDs with HandBrake」で詳しく説明している)。幸いなことに、Jeffrey Kirk氏がHandBrakeGTKというGTKベースのGUIを作成してくれた。

 HandBrakeGTKは決して最速のリッパーの1つであるとは言えない。それどころか、最も遅い部類に入る。ただし、libdvdcss2なしで、暗号化されたDVDのリッピングに成功したのはHandBrakeGTKとThoggenだけである。さらに、HandBrakeGTKには多くの機能が備わっている。たとえば、リッピングするタイトルとチャプターを選択したり、プリセットを使用したりすることができる。きちんと動作しさえすれば、どんなに遅くてもかまわないという方には、HandBrakeGTKが適している。

AcidRip

 AcidRipは、MEncoderの強力なGTK2インタフェースで、最も機能豊富なリッパーの1つである。AcidRipには強力なユーティリティがいくつも備わっている。

 しかし残念なことに、libdvdcss2があってもなくても、AcidRipでは暗号化されたDVDをリッピングできなかった。機能が多いだけに、この点はまったく期待外れだ。AcidRipの主な強みは圧倒的な機能の豊富さにある。もっとも、機能が多すぎると混乱しやすいのだが。暗号化されていないDVDだけしかリッピングできないので、AcidRipが適していない方もいるだろう。

dvd::rip

 dvd::ripは名前こそオリジナリティに欠けるものの、注目に値するツールである。何と言っても、dvd::ripは最も古くて最もよく知られたDVDリッピングプログラムの1つなのだ。

 AcidRipと同様、dvd::ripにもプロジェクトやクラスタコントロールといった強力な機能が数多く備わっている。その点でパワーユーザには申し分がないのだが、ベーシックユーザはないがしろにされている。しかも、libdvdcss2がなければ、dvd::ripでは暗号化されたDVDをリッピングできなかった(ただし、libdvdcss2があれば最速である)。しかし、libdvdcss2をインストールする気がなくて、圧倒的な機能の豊富さを良いことだと思う方には、dvd::ripが適している。

Thoggen

 AcidRipとdvd::ripはややこしすぎて混乱するという方は、Thoggenを調べてみるとよいだろう。Thoggenには機能がほとんどない。リッピングするタイトルを選択して、Ogg形式としてリッピングするだけだ。

 暗号化されたDVDと暗号化されていないDVDの両方をリッピングできたのは、ThoggenとHandBrakeGTKだけである。ただし、libdvdcss2がない状態では、暗号化されたDVDのリッピングに11分もかかってしまった(libdvdcss2がある場合には2:20で済んだ)。込み入ったGUIを好まないベーシックユーザには、Thoggenが打ってつけだろう。

VLC

 VLCは、どんな形式のものでも再生、エンコードができ、メディアのストリーミングやディスクの洗浄もできるメディアプレーヤーで、DVDのリッピングもできる。とはいえ、それほど簡単にできるわけではない。その手順についてはVLCによるDVDのリッピング方法に関する記事を見てほしい。

 VLCのパフォーマンスは、暗号化されたDVDに関しては失望する結果に終わった。libdvdcss2はVideoLAN(VLCの開発者)によって作成されたのだが、VLCは市販のDVDをリッピングできなかった。ただし、暗号化されていないDVDのリッピングに関してはダントツのスピードを記録した。暗号化されていないDVDだけをリッピングし、高度な構成を必要としない方には、VLCがお勧めだ。

どれが最適か

 それぞれのDVDリッパーに強みと弱みがある。libdvdcss2(国によっては合法性に疑いがある)のないリッパーを使用したければ、選択肢はHandBrakeしかない。特別のライブラリをインストールするつもりがなければ、dvd::rip(ハードコアユーザ)とThoggen(ベーシックユーザ)が最適だ。自分で焼いた古いDVDをリッピングするだけなら、高速なVLCか強力なAcidRipを試してみるとよいだろう。

サポートしている出力形式
HandBrake AcidRip dvd::rip Thoggen VLC
Audio Video Interleave(AVI) Audio Video Interleave(AVI) Audio Video Interleave(AVI) Ogg Media(OGM) Advanced Systems Format(ASF)
Matroska Multimedia Container(MKV) NuppelVideo(NUV) Ogg Media(OGM) MPEG-2
MPEG-4(MP4) QuickTime(MOV) Super Vicdeo CD(SVCD) MPEG-4(MP4)
Ogg Media(OGM) MPEG-1 Audio Layer 3(MP3) Ogg Media(OGM)
Advanced Audio Coding(AAC) QuickTime(MOV)
MPEG-3 Audio(MP3) Free Loseless Audio Codec
Dolby Digital(AC3) Waveform Audio Format(WAV)
Ogg Vorbis(OGG)

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