btnxでマウスの有効活用

 Logitech VX Nanoのようなしゃれたマウスに大枚をはたいたときは、当然、誰でも投資に見合うだけのものを得ようとする。つまり、プログラマブルボタンをちゃんと動くようにする。だが、多くのLinuxディストリビューションでは、ほとんどのマウスが一般的なポインティングデバイスとしてしか認識されず、箱から出した状態では、見栄えのいいせっかくのボタン群がどれも動かない。こんなマウスを、万能ツールという本来あるべき姿に変身させるのが、 btnx ユーティリティである。

 btnxは2つに分かれている。1つはbtnxデーモンで、マウスボタンイベントの管理という舞台裏の仕事を引き受ける。もう1つはbtnx-configツールで、こちらはマウスボタンの動作を設定するためのグラフィカルフロントエンドである。btnxのWebサイトには、Ubuntu用とopenSUSE用のパッケージのほか、他のディストリビューション用にソースコードアーカイブが用意されている。パッケージはソースコードアーカイブより半歩遅れていることが多いので、最新バージョンをインストールしたければ、例によって「./configure; make; make install」の手順によらなければならない。

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btnx-config

 マウスの設定には、btnx-configツールを立ち上げる。”Detect mouse & buttons”を押して、マウスとすべてのボタンを確認することから始めよう。btnx-configはボタン検出ウィザードをオープンするので、その指示に従ってマウスボタンの検出とラベル付けを進めていく。この検出手順に難しいところはない。ウィンドウの一番上にあるStartボタンを押してから、あるマウスボタンをクリックしつづけ、Button検出セクションの進捗状況バーが終わりまで行ったら、そのボタンに名前を与えて、Addボタンを押す。他のマウスボタンについてもこの手順を繰り返し、最後にOKを押す。

 すべてのボタンが認識され、ラベル付けされたら、それに動作を割り当てる。Buttonタブに切り替え、左の窓からマウスボタンを1つ選択して、そのボタンに割り当てたいキーをKey combinationセクションにあるKeycodeドロップダウンリストから選択する。たとえば、Logitech VX NanoマウスのZoomボタンを中央ボタンとして動作させたいなら、BTN_MIDDLEを選択する。さらに、修飾キーを最大3個まで割り当てられるので、これで複雑なボタン動作も設定できる。この機能を利用すれば、たとえばFirefoxにおけるページ間移動にVX Nanoのチルトスクロールホイールを使える。それには、適切なキーコード(右チルトにKEY_RIGHT、左チルトにKEY_LEFT)を指定したうえで、KEY_LEFTALT修飾キーを指定する。これはキーボード上の左ALTキーをエミュレートする。マウスボタンにキーコンビネーションを割り当てるときは、Enableチェックボックスのチェックを忘れないこと。これをしないと、指定したキーとボタンのマッピングが有効にならない。

 キーコンビネーションを割り当てる以外に、自分で定義したコマンドをマウスボタンで実行することもできる。たとえば、Zoomボタンでテキストエディタや、KDE Control Centerや、その他を起動させたいのなら、Event typeドロップダウンリストからCommand executionを選択し、望みのコマンドをExecute commandフィールドに入力する。

btnxは複数の設定プロファイルをサポートする。1台のコンピュータで複数のマウスを使うユーザ(たとえば、デスクでの作業にはトラックボールを使い、移動時にはノートブックマウスを使う、など)には便利だろう。

 さて、せっかく苦労して設定したボタンだから、その設定をほかのマシンでも使いたい。あるいは、単純にバックアップしておきたい。そんなときは、Backupボタンを押すことで、バックアップファイルを作成して、望みの場所に保存しておける。保存しておいたバックアップファイルの設定を復元するときは、Restoreボタンを使う。

最後に一言

 プログラマブルボタンを備えたマウスがある方は、ぜひbtnxを試してみてほしい。マウスの持つポテンシャルを引き出し、強力な万能ツールに変身させられる。思うに、btnxはすべてのディストリビューションに同梱されるべきではなかろうか。ソフトウェアリポジトリにデフォルトでbtnxを含めていないLinuxディストリビューションが多いのは、不思議でしかたがない。

Dmitri Popovはフリーランスライター。ロシア、イギリス、アメリカ、デンマーク各国のコンピュータ雑誌に寄稿している。

Linux.com 原文