オプタロスが「OSS製品評価カタログ」を公表──低評価のベンダーからは怒りの声も

 オープンソース・システムのインテグレーションとコンサルティングを手がける米国オプタロスは1月10日、厳選した企業向けオープンソース・アプリケーション262本をレビューしたガイド・カタログ「Open Source Catalogue 2007」を同社のWebサイト上に公開した。

 同カタログは、ソフトウェアの機能性や成熟度、安定性、ディベロッパー・コミュニティの活発さ、将来性を3から5段階で評価しているほか、ソフトウェアが中堅企業や大企業でどの程度使えるかを示すエンタープライズ対応度を3段階で評価している。

 カタログの制作主任、ブルーノ・フォン・ロッツ氏によると、レビューには、約 100人のコンサルタントが携わっており、その多くは顧客サイトでソフトウェアを直接インストールしたり保守したりした経験のある人材であるという。評価対象は昨年秋までにリリースされた製品で、約14万のオープンソース・ソフトウェア・プロジェクトから厳選したとしている。

 同氏は、「エンタープライズ対応度で1か2の評価しか与えられていなくても、カタログに掲載したツールはいずれもかなり優秀な製品だ」と強調している。

 有名なオープンソース・ソフトウェアであっても、低い評価しか与えられていないものもある。例えば、「Berkeley DB XML」データベースの場合、エンタープライズ対応度は1の評価しか与えられていない。この点について、同データベースを昨年買収したオラクルにコメントを求めたが、本稿執筆時までに回答は得られなかった。

 話題のグループウェア・ソフトウェア「Zimbra」もエンタープライズ対応度は1の評価しか与えられていない(評価0の製品はカタログには掲載されない)。ジンブラの広報担当者は、評価はあくまでバージョン3.0の製品に対するものだとし、次のように弁明している。

 「オプタロスは改良版の『Zimbra Collaboration Suite 4.0』を非常に高く評価しており、今では自社内に展開するなど、ジンブラの優良顧客になっている」

 また、サン・マイクロシステムズの「Java Messaging Service」をベースとするオープンソースのミドルウェア製品で、7年の歴史を持つ「OpenJMS」も低い評価にとどまっている。

 この点について、OpenJMSのプロジェクト・リーダーの1人であるオーストラリア人の開発者、ティム・アンダーソン氏は、「この評価を批判するつもりはない。もともとOpenJMSは家庭や個人的な仕事に使用することを重視して開発していたこともあって、しばらく開発作業が滞っていた。今後2、3カ月以内にベータ版を出す予定だ」と述べている。

 その一方で、オプタロスが特定のオープンソース・ベンダーとマーケティングや再販契約を交わしていることから、オープンソース・ディベロッパーの中には、同社の評価に異論を唱え、客観性を疑問視する向きもある。

 コードウィーバーズのCEO、ジェレミー・ホワイト氏もその1人だ。同社は「CrossOver」というソフトウェア・ファミリを販売しており、ユーザーは長年、Mac OS XやLinux OSを搭載したコンピュータでWindowsソフトウェアを走らせてきた。

 CrossOverはオープンソースの「Wine」プロジェクトをベースにしており、ホワイト氏は同プロジェクトの保守責任者の1人でもある。Wineは、製品の成熟度では5段階の2にとどまっており、エンタープライズ対応度も総合評価で1という厳しいスコアだ。

 ホワイト氏はこれらの評価について、「深刻な問題だ」と不快感をあらわにする。

 「Wineベースの企業向け製品は4年前から販売しているうえ、Wine自体は13年も前から提供されている。当社の製品は多くの大企業に採用されており、数千ユーザー規模の大口契約も少なくない。エンタープライズ対応度が1というのはあまりにも不愉快だ。私の主張は実際に企業ユーザーの声を聞いてもらえば納得していただけるはずだ」(同氏)

 ホワイト氏にとって「もっと腹立たしい」のは、オプタロスがライバルの「Xen」仮想化テクノロジーにより高いスコアを付けていることだ。Xenは成熟度、エンタープライズ対応度の両方で3の評価を獲得している。

 この点について、ホワイト氏は、「Xenは確かに最新のテクノロジーであり、将来性もある。しかし、成熟度が3というのは理解に苦しむ。オプタロスは Xenに精通しており、自分たちが詳しいことを宣伝して商売に結び付けようとしているのではないかと勘ぐりたくもなる。もし本当にそうなら、そんなリポートは信用に値しない」と強い口調で訴える。

 また、OpenJMSのアンダーソン氏は、オプタロスのカタログに掲載されているAjaxプログラミング・ツールのリストを見て「目を丸くした」という。なぜなら、ネクストアップの「Echo2」やグーグルの「Web Toolkit」といった価値の高いツールが除外されていたからだ。

 オプタロスのロッツ氏はこうした批判があることを認めたうえで、もし顧客に売りたいという理由だけで脆弱なソフトウェアを宣伝したとしても、結果としてオプタロスの利益につながらないと力説する。「われわれが使っているからといってそのツールを特別扱いするつもりはない」(同氏)

 また同氏は、公開されたカタログがあまりに製品を限定しすぎているという批判について、目的は多忙なITマネジャーやCIOにシティ・マップのようなガイドを提供し、彼らが名前さえ聞いたことのない無数のアプリケーションの中から適切なものを「ナビゲート」することにあると反論する。たとえ機能性についての評価が高かったとしても、そのソフトウェアがエンドユーザーにとって良いものだとは限らないというのだ。

 「市販のソフトウェアの場合、機能が多すぎて顧客が混乱することも多い。もっと機能を減らしても十分だと感じている」(同氏)

 オプタロスのスイス法人でマネジャーを務めるロッツ氏は、オープンソース・ソフトウェアの中で今日最も進んでいる分野はコンテンツ管理やCRM、アプリケーション・フレームワーク、OSであるという。一方、いまだに弱い分野として、機能的に成熟していないアイデンティティ管理やeラーニング、ERPを挙げている。

 「SAPに代わるオープンソース・ソフトウェアは残念ながらまだ存在していない」(同氏)

 オプタロスは、「OpenOffice」をはじめとするオープンソースの業務ソフトウェアや、「Red Hat」「SUSE Linux」「Ubuntu」といったデスクトップOSに高い評価を与えているが、ロッツ氏によると、実際にクライアントPCをマイクロソフトの OfficeやWindowsからオープンソースに切り替えた顧客はほとんど見られないという。

(エリック・レイ/Computerworld オンライン米国版)

米オプタロス
http://www.optaros.com/

提供:Computerworld.jp